力学に出てくる物理量①(位置と変位)

力学

位置 x[m]

位置とは物体が空間の中のどこにいるのかを表す物理量のことである。文字は x を用いて、単位は長さの単位である[m]を用いることが多い。

直線上のみを運動する物体が空間のどこにいるのかを表すには、一つの実数を用いる必要がある。
以下の例で考えてみる。

Aさんの位置は 2 [m]、Bさんの位置は -3 [m]と表すことができる。ここで位置というのは、原点からの距離ではないということに注意が必要である。原点から見たときにAさんは右に 2 [m]の場所であり、Bさんは左に 3 [m]の場所にいる。
位置という物理量は原点からどれくらい離れているのかという大きさと、どの方向にいるのかという向きの、
二つの情報をもっているのである。

このように大きさだけでなく向きも持った量のことをベクトルという。つまり位置というのはベクトル量であるということができるのである。
直線上(1次元上)の位置のみを指定する場合であれば、向きは符号(+と-)、大きさは正の実数で指定すればよいのである。

一方で、後述することになる質量やエネルギーなどの物理量は大きさのみであり、向きという情報をもっていない。
このような量のことは一般的にスカラーと呼ばれている。
このように物理学では、扱っている物理量がスカラーなのかベクトルなのかということが非常に重要となってくるため、意識して学習しておくと、数式の持つ意味が明確に感じることができるであろう。



では次に平面上を運動する物体が空間のどこにいるのかを表す位置をどのように表現するのかを考えてみる。
以下の例で考えてみよう。

Cさんの位置をどのように表せばよいか?言葉で表すとするならば、「 x 軸方向に+4 、 y 軸方向に+2 の位置」と答えればよいだろう。
この言葉を表しているのが緑の矢印であり、( 4 , 2 )と表現すればCさんの位置を一意に指定することができる。
同様にAさんの位置は( 2 , 0 )、Bさんの位置は
( -3 , 0 )と表現することになる。

一般に、平面上(2次元)を運動する物体の位置を表現するには2成分必要であり、空間上(3次元)を運動する物体の位置を表現するには3成分必要である。
このように任意の位置を原点Oからのベクトルで表現したものを数学では位置ベクトルと呼んでいる。

ここまでの話で分かると思うが、位置を表現するにあたって最も大切なのは原点Oがどこかということである。
位置と同様の意味でよく用いられる座標も原点Oの存在が非常に大切となってくる。この感覚は剛体の重心座標などの議論の際に意識させられることになるが、今は原点から見て、物体はどこにいるのかというのを表したものが位置であるということを理解しておけばよい。

変位 ⊿x[m]

では次に変位 ⊿x を考えてみる。
変位の定義は、物体の位置の変化量のことである。⊿はデルタと読み、変化量を表す際に文字の前に付けて記号であり、⊿x で一つの文字として扱う。
ではいくつかの例を示してみよう。

Aさんは 1 の位置から 4 の位置に移動した。
右に 3 だけ移動した訳だから、変位の値は 3 と答えれば良いだろう。

では2つ目の例で考えてみよう。

Bさんは +2 の位置から -3 の位置に移動した。
左に 5 だけ移動した訳だから、変位の値は -5 と答えるのが妥当だと思われる。気が付いた方もいるかもしれないが、今回扱っている変位も向きという情報のあるベクトル量である。矢印がまさにそれを表しているのである。

AさんとBさんの変位については視覚的に答えを出すことができたが、視覚的ではなく、どのように計算すれば一般的に変位を計算できるだろうか。
Aさんの場合はあまり難しくないだろう。Aさんの変位と毎回書くのは面倒なので⊿xA としよう。

⊿xA = 4 - 1 = 3

これでよいのである。
一方Bさんはどうだろうか。できればAさんと全く同じ計算方法が取れればありがたい。ここでAさんの変位を求めた式についてもう一度考えてみる。

⊿xA =  4      - 1       = 3
     移動後の位置    移動前の位置   変位  

このように見ると、変位は(後の位置)ー(前の位置)という計算をしていることがわかる。よって、Bさんの変位は次のように計算すればよいと推測できる。

⊿xB =  (-3)     - (+2)      = -5
     移動後の位置   移動前の位置    変位    

-5 という値がでてきた。これを変位の定義とすればよいだろう。ではここで一般的な変位の定義を確認しておく。物体の移動前の位置をx1 、移動前の位置をx2 とすると、

⊿x = x2 - x1

これが変位の定義である。



補足として注意点を挙げておく。
変位はあくまで位置の変化量を表した物理量なのであって、移動距離を表しているのではない。

たとえばBさんの例で考えると、変位は -5 であるが移動距離と聞かれれば 5 と答えるのが妥当であろう。
ここで伝えたいのは移動距離は向きという情報のないスカラー量であり、変位というのは向きという情報を含んだ
ベクトル量であるということである。ここは混同しがちであるため注意したい。

また次のような例を考えてみる。

この場合はどうだろう…
移動距離と言われれば 13 と答えることになるが、変位と聞かれれば 3 と答えるべきである。
あくまで変位というのは前後の位置の変化であるから、途中でどのような経路を通ったのかは関係ないのである。
これは等加速度直線運動などのように、Uターンのある運動を考える際に注意しなければならない点である。



では最後の例として平面上(2次元上)を運動する物体の変位について考える。
下の図で考えてみよう。

Cさんは位置( 2 , -2 )から位置( -3 , 4 )に移動している。先ほど定義した変位同様に、
(後の位置)-(前の位置)で計算できる。
よって変位は次のように計算できる。

(Cさんの変位)=( -3 , 4 )-( 2 , -2 )
        =( -3 -2 , 4-(-2) )
        =( -5 , 6 )

これで変位については完璧だろう。

    \begin{eqnarray*} \dot{x}=Ax+Bu \end{eqnarray*}

これで変位については完璧だろう

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