物理量②(位置・移動距離・変位)

~~ 基礎の基礎なんだけど難しいよね… ~~


物理の目的は運動を考えることにある。そして運動をするというのは「物体の持つ位置という値が、時刻によって変化すること」であった。前回の記事で時刻については十分考えたため、今回の記事では位置という物理量を考えていこうと思う。

今回のテーマでも似た用語が複数存在するため、同時に説明していくことにする。今回考える物理量は「位置」「移動距離」「変位」だ。


位置とは何か

まずは位置という物理量の定義を確認しておこう。

  • 位置…基準点(原点)から見て、物体がどこにあるかを表す物理量

具体例で考えてみよう。以下のように一直線上で右向きを正の向きとし、キャットタワーの位置を基準とすると、寝ているネコ及び白ネコの位置はそれぞれ次のようになる。

  • 寝ているネコの位置: x=5x=5 [m]
  • 白ネコの位置   : x=3x=-3 [m]

位置の記号には xx をよく用いる。そして主に用いられる位置の単位は [m](メートル)である。

ここで強調しておきたいのは、位置は場所ではなく座標であるということである。寝ているネコの場所であったり、白ネコの場所という言い方では、数値で表すことができる客観的な量にならないため、物理量として不適である。そのため、座標というのが物理で定義している位置の表現として適しているのである。

もう一つ大事な事を述べておこう。それは、「同じ場所であったとしても、位置は複数の値を取り得る」ということである。以下の例で考えてみよう。

白ネコ・キャットタワー・寝ているネコの場所は先ほどと全く変わっていない。ここで先ほどと変えたのは基準となる座標の原点だけである。先ほどはキャットタワーの位置を基準としていたのに対し、今回は白ネコの位置を基準としたのである。その結果、寝ているネコの位置は x=8x=8 [m] に変化したのである。

この事実は「位置は物体そのものがもつ性質ではなく、座標系とセットで決まる量」であることを主張している。「位置を物理量として数値で表現する際は、基準をどこにするかというのをまずは決めなさい」という訳である。そして基準をどこにするかは、(問題で指定されていない限り)こちら側で自由に決めてよい。一番議論がしやすい位置を基準にすればよいのである。

ここまで位置について議論を進めてきたが、位置だけで物体の運動を表現することはできない。なぜなら、物体は移動することで位置の値が一刻と変化するためである。そのため位置が変化することを表す物理量を新たに作る必要がある。


移動距離と変位

位置が変化することを表す物理量は、次の2つ存在する。まずが定義を確認しておこう。

  • 移動距離…物体が実際に通った道のりを表す物理量
  • 変位  …物体の位置の変化量を表す物理量

一見すると同じように見えるかと思うが、この2つは異なる物理量である。ここでは3つのシチュエーションで考察してみようと思う。緑の矢印はネコの移動した経路を表していると思ってほしい。

移動距離に関しては比較的わかりやすい。実際にネコが通った道のりを計算すればよいだけである。単位には位置と同じ [m] を用いる。答えだけ示しておこう。

  • ①→ 8 [m]
  • ②→ 16 [m]
  • ③→ 8 [m]

一方で変位はどうだろうか。変位の記号には ΔxΔx を用いる。単位は [m] だ。

変位の定義の中に入っている変化量というのは、(変化後の値)ー(変化前の値)という意味を表している。そのため、次のような関係が成り立つことになる。

(変位)=(運動後の位置)ー(運動前の位置)

運動前の位置 x1x_{1} と、運動後の位置 x2x_{2} と用いて、この関係を数式で表現すると次のようになる。

Δx=x2x1Δx=x_{2} – x_{1}

変位において大事なことは、あくまで前後の位置関係のみに着目しているのであって、途中にどのような経路を通っているのかということは考慮していないということである。ここまでの事実を踏まえて①~③における変位を計算してみよう。

  • ①→ Δx=102=8Δx= 10 – 2 =8 [m]
  • ②→ Δx=102=8Δx= 10 – 2 =8 [m]
  • ③→ Δx=210=8Δx= 2 – 10 = -8 [m]

したがって、①においては移動距離と変位は一致しているが、②と③においては移動距離と変位の値が異なることが確認できた。


物理では移動距離と変位のどちらをより重視するべきか

移動距離と変位の違いはよく分かった。ではどちらをより重視するべきだろうか?

明確な違いは、途中の経路を考慮するのかどうかである。この視点で言うと、一見しっかりと途中経路を考慮している移動距離の方が優れているように感じる。

ところがそうではないのである。むしろ経路によって値が変化してしまう値というのは物理にとっては不都合なのである。私たちが考えたいのは物体の運動である。以前の記事『物理学で物体の運動を考えるとはどういうことか?』において、運動が記述できるというのは、位置が時刻の関数として表現できることであると述べた。これができているのであれば、物体がどのような経路を通っているのかも含めてすべて説明ができていることになる。そのため、むしろ位置の変化を議論する今回は運動の前後のみの情報で、計算ができる変位の方が好都合なのである。

もう一つ決定的な観点を述べておこう。それは、変位には移動距離にはない「向き」の情報が含まれているということである。③を例を確認してみてほしい。移動距離は 8 [m]であるが、変位は Δx=8Δx = -8 [m]であった。これは「位置の変化が負の方向であり、位置の変化の大きさが 8 [m]である」ということを意味しているのである。

移動距離には向きという情報が入ることはない。あくまで何[m]の道のりを移動したのかというのを表すだけである。しかし、変位にはどちらの方向に位置が変化したのかという情報と、どれくらいの位置の変化があったのかという2つの情報が1つの値(実数)として表現されているのである。運動を考えるに当たっては、どの方向に移動しているのかを考えることは重要である。そのため、移動距離と変位では、変位を考えることの方が物理的にはより重要だと言うことができるであろう。


まとめ

今回は、位置に関する物理量についてまとめてきた。前回の記事の時刻と合わせて、力学における基礎となる物理量は残すところ質量のみである。まだしばらくは物理量の解説が続くことになるが、分からないことが出てきたら、ぜひとも時刻と位置についての理解を深め直してみてほしい。

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