物理学で物体の運動を考えるとはどういうことか?

~~ 物理は結局なにがしたいのか? ~~


力学の目的は何か?

この問いに自信を持って解答できる人は少数に思える。高校の物理では、よく分からない文字や計算がたくさん出てきて、途中で何をやっているのかを見失いがちであろう。目的がよく分からないままでは、学習もつらいものになるだろう…。

目的は至ってシンプルである。物体がどんな運動をするのか知りたい。そして数学的に記述して計算して運動の予言がしたい。ここに集約される。

そのため、「物体が運動している」とは何かを確認しておく必要がある。

物体が運動するとは、「物体が持つ位置という値が、時刻が経過することによって変化することである」と物理では考える。

そしてどの時刻においてどの位置に物体がいるのかが明らかになっていれば、その物体が(過去そして未来において)どのような運動をするのか完璧に理解できていることになる。これが『力学の目的とは何か?』という問いの答えである。

具体的な例を1つ示しておこう。

通天閣(高さ約 x=100x = 100 [m] )から鉄球を落として落下する運動について考えてみる。時刻 t=0 t = 0 [s] において静かに鉄球を離した場合、その後の位置と時刻の関係は次のようになる。

時刻 tt [s]位置 xx [m]
0100
195
280

空気抵抗を無視し、重力加速度が 10 [m/s2]の場合

このような関係がすべて分かることが、「物体の位置が時刻とともに、どのように変化するかを明らかにすること」である。

当然今のままでは、すべては明らかになっていない。例えば、時刻 t=3t = 3 [s]においてどの位置に物体がいるのかはわからないし、位置 x=90x=90 [m]に達したときの時刻がいつだったかも明らかにはなっていないからである。

では、物体の位置と時刻の関係を(すべて)明らかにするにはどうすればよいだろうか?いやその前に、どうすれば物体の位置と時刻の関係を(すべて)明らかにしたと言えるだろうか?


関数で表現する

この問題を解決する方法が、数学で学ぶ関数を用いることである。そのために、まず関数とは何かということを確認しておく必要がある。ここではより丁寧な説明を試みてみようと思う。

関数 y=f(x)y = f(x) とは、

ある値 xx (この値は変数であるため、どんな値であってもよい)を用意する。そしてその値を、値 xx を入れることのできる関数 ff (函 (箱)をイメージすればよい)に入れる。その結果、この関数 ff の持っている独自の規則にしたがって、新たな値 yy (出力)が出てくる。このような値 xx と値 yy の一対一対応の関係のことである。

関数 ff が、「入れた値 xx を 2 倍してその後 1 を足した値 yy を出力する」という規則をもっている場合、我々は y=2x+1y = 2x + 1 と表現する。

また、関数 f が、「入れた値 x を 2 乗した値に対して 3 をかけて、さらに 5 を足した値 y を出力する」という規則をもっている場合、我々は y=3x2+5y = 3x^2 + 5 と表現する。

では、このとき入れる変数と出てくる出力が、物理的に意味を持った数値である場合はどうだろうか?

入れる値(変数)を時刻 tt 、出てくる値(出力)を位置 xx としてみる。もし仮にそのような関数が分かっている場合、「時刻 tt の中で具体的な値を入れると、分かっている規則に則って位置 xx の具体的な値が出力される」ことになる。

これがとんでもなく凄いことであることが分かっていただけるであろうか?

このような関数が分かっているのであれば、物体の運動は完全に記述することに成功したと言えるのである。

先ほどの例で考えてみよう。実は通天閣から鉄球を落とす場合、関数は明らかになっている。結論だけ述べると、「入れた値 tt を2乗した値に対して -5 をかけて、その値に 100 を足した値 xx を出力する」という規則をもっている。つまり、 x=5t2+100x = -5t^2 + 100 と表現されることが知られている。

このように物体の位置 xx が時刻 tt の関数として表わすことができた場合、時刻 t=3t = 3 [s]においてどの位置に物体がいるかを知りたければ、 x=5t2+100x = -5t^2 + 100tt に 3 を代入して x=55x = 55 [m]であることが分かる。また位置 x=90x=90 [m]に達したときの時刻がいつだった知りたければ、x=5t2+100x = -5t^2 + 100xx に 90 を代入して t=21.41t = \sqrt{2}\fallingdotseq 1.41 [s]であったことが分かる。

これは通天閣から鉄球を落下させた後の、物体の位置 xx と時刻 tt の関係をすべて明らかにしたと言えるだろうなぜなら、どちらか一方に具体的な値を代入すると、もう一方の値は確実に求めることができるためである。


これから考えること

目的ははっきりしたと思う。そのため、まずは今回登場した位置 xx や時刻 tt などの、物理的な意味を持った数値である物理量の定義をしっかりおこなう事から始めていこうと思う。ここが曖昧になると、しっかりとした議論ができなくなるためだ。

それらの定義をしっかりおこなった後は、関数がどのように表現できるかを議論していこうと思う。この章での帰結は物理を学習した人なら聞いたことがあるであろう、「等速直線運動」・「等加速度直線運動」である。

  • x=vtx = vt      (等速直線運動)
  • x=v0t+12at2x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2  (等加速度直線運動)

有名なこれらの式が自分のものになるように、これからぜひ頑張ってほしい。

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